熊川分水

熊川分水は明治23年(1890)に完成した玉川上水からの分水で、熊川村(現:
福生市大字熊川)の生活用水・灌漑用水、そして酒造・製紙業の工業用水として
利用されていた。
熊川村は多摩川沿いの崖線の上に位置する水に乏しい集落で、井戸に頼ってお
いた。
古くは寛政3年(1791)に工事の願いが提出されたが実現せず、明治期に入って
からは石川弥八郎(弥八郎は襲名、本名は千代蔵)が酒造米の精白のための水車
の稼動を目的として計画、紆余曲折を経て明治19年に東京府知事へ上願書を
提出、許可が下りた。
その後、3年の歳月と総額一万円余の費用をかけて明治23年1月に完成した。

熊川分水の取水口は青梅橋の上流数百メートルの位置にあり、橋の上流から堰を
確認することができる。
かつては玉川上水南側にある神社の裏から取水口脇に近づけたようであるが、
現在は封鎖されている。
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分水してすぐは暗渠となるが、青梅橋の通りから2ブロックほど行った場所で
熊川分水は住宅の間から姿を見せる。
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奥多摩街道とJR五日市線の踏切脇を水路が流れていく。
この後、熊川分水は奥多摩街道西側の住宅街の中を流れていくことになる。
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踏切から百メートルほど行くと、広大な草叢の中を流れる。
この場所にはフェンスが張られ都有地の看板が掲げられ入ることはできないが、
森田製糸場の跡地である。
森田浪吉は明治6年(1873)、この地に東京府初の製糸所を創業した。
福生の地場産業である養蚕業を基盤に事業を拡張し、明治35年(1902)には
従業員400人という、東京府でも屈指の大企業となったという。
また森田浪吉は熊川分水開削にあたり、前掲の石川弥八郎とともに高額出資を
している。
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水路はその後、再び住宅街の中へと入っていく。
場所によっては、個人宅の庭先に熊川分水が流れている箇所もある。
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熊川分水近くにある福生院(ふくしょういん)
室町時代の創建とされ、徳川幕府の旗本、長塩氏の墓がある。
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道路の脇を流れる熊川分水。
脇にある青い掲示は「熊川分水に親しむ会」というボランティア団体による
「文化と自然を守ろう!」という掲示である。
ともすればこのような水路は暗渠化されてしまう場合もあるが、分水は地域
の人々に守られているようで安泰というところか。
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やがて右手に熊川神社が見えてくる。
平安初期に地元の長者が守護神として弁財天を祭ったのが始まりとされ、
境内には七福神全てが祀られている。(福生七福神という別名がある)
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その熊川神社脇には熊川用水の説明板がある。
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水路の所々で暗渠となる。道路沿いを流れているので、家の出入りのために
は仕方がないのかもしれない。
その暗渠の途中でも穴が開いており、水の流れる様子を見ることができる。
何気なく撮影してみたが、後からWebで調べてみると、ここはどうやら洗い場
の跡のようである。
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睦橋通りの先で熊川用水は道路から逸れて、民家の敷地内へと入っていく。
その先、更に百メートルほど歩くと、蔵造りの建物が見えてくる。
そこが石川酒造で、熊川用水はこの敷地内を貫いている。
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石川酒造は熊川村の名主であった石川家の十三代目当主の石川和吉が文久3年
(1863)に創業したもので、前述の通り、十四代目千代蔵は熊川分水の整備
に大きく貢献した。

銘酒「多満自慢」のほか、地ビールも製造している。
敷地内には売店のほか、レストランも併設しており、多くの観光客で賑わう。

石川酒造を過ぎると用水は畑の中を進んでいく。
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迂回していくと、その先、多摩川沿いの河岸段丘を滝となって流れ落ちる。
どうどうの滝と呼ばれ、その下流にある散策路から見ることが出来る。
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熊川用水は多摩川に直接流れ込むのではなく、下の川という河川に合流する。
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下の川は多摩川沿いの崖線の湧水を集める短い河川で、上流部にはほたる公園
がある。(熊川用水取水口に近い)
この先、数百メートルで下の川は多摩川に合流する。


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善福寺川沿いのウォーキングから始め、東京や近郊の中小河川・用水・暗渠を巡る。
07年「善福寺川リバーサイドブログ」を綴り始め(14年6月閉鎖)、13年2月から当ブログを開始。

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